大会宣言

2019年に発生したコロナ禍もようやく収束が見え始め、第64回全道ろうあ者大会in岩見沢が開催できる喜びを皆さまと分かち合いたいと思います。
大会のメインテーマは「笑顔で支えあおう 語りあおう未来へつなごう 手話は命」です。
手話言語は、私たちが生きるための「ことば」ですが、社会に認知されるまで長く苦しい道のりがありました。
障害があるというだけで逸失利益を低くする、子どもを産めない、産まないよう強制不妊や中絶手術を強いられてきた歴史には、優生思想があります。私たちは「障害の有無によって人間の価値を左右しない」ことを知るべきであり、被害者と共に1日も早い人権回復のため行動していきます。
多様な人が共に暮らしやすい社会とは、多様な人の生き方が否定されない社会です。その思いは、全日本ろうあ連盟創立70周年記念映画「咲む」にも描かれています。
きこえない人がきこえる人と同等に社会参加をしていくために必要な「手話言語法」の法制化へ、私たちはこれからも行動していきます。
2025年にはきこえない人のオリンピックである夏季デフリンピックが日本で開催されます。
世界のきこえない人たちが集うデフリンピックの開催、成功が「平和と自由」を享有できる社会へとつながることを願い、ろうあ運動の歩みをさらに前進させていくことを誓います。

2023年9月3日 
第64回全道ろうあ者大会 

大会決議

1.
「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の理念に則り、あらゆる分野での情報アクセシビリティを実現していこう。

  • (1)ろう者が自らの参政権を完全に行使できるよう、知事、市長会見や議会などの政治参加に係るすべての場面において、手話言語をはじめとする視覚的な情報保障の整備の義務付けを求めていこう。
    (2)コミュニケーション手段の理解を広めるため「手話マーク」「筆談マーク」の普及を図り、社会に対して情報保障に対する意識をさらに高めていこう。
    (3)コロナ禍や災害時などの緊急事態に、従来の枠組みを補完・補強する遠隔手話通訳の体制構築を国及び北海道の責任において整備することを求めていこう。
    (4)次世代の手話通訳者育成を図るため地方自治体と北海道と協働して手話通訳者育成できる環境整備に取り組み、手話通訳者(社会資源)を増やしていこう。

 

2.
「日本手話言語法」を制定し、手話言語は音声言語と対等という認識を普及し、ろう者を取り巻く社会的障壁の除去をめざそう。

  • (1)手話言語を身につける機会を保障するために。
    (2)手話言語で学ぶことを保障するために。
    (3)手話言語を教科として学べ、手話言語を習得するために。
    (4)手話言語を誰でも気軽に使える社会にするために。
    (5)手話言語の語彙を増やし、保存し、研究するために。

 

 

3.
ろう者の社会参加促進のため、社会資源の整備と就労支援の充実を求める。

  • (1) ろう児・者の誰もがICTを活用でき、医療・福祉・労働・教育・文化等あらゆる場面で社会参加が可能な環境整備を求める。
    (2) 中核市(旭川市・函館市)にも聴覚障害者情報提供施設の整備を求める。
    (3) ろう高齢者、ろう重複障害者施設の整備を求める。
    (4) ろう者が安心して働けるよう、行政や民間企業に研修会等による学習機会を作り、合理的配慮提供に対する理解を求め、雇用機会の確保やろう者の特性を踏まえた就労環境を作るよう求める。
    (5) 災害、政策的な要請によって、ろう者等が利用・入所・通所する事業所の経営悪化に対し、事業継続のための財政支援を、国及び自治体に求める。
    (6) 防災・発災の情報取得、避難所、福祉施設等での情報保障のためにアイドラゴン4を設置し、災害に関する正確な情報を把握し、自らが的確な行動ができるよう環境整備を求めていこう。
    (7) 被災者への相談支援体制の充実を図り、ろう者自身も被災者支援に取り組める環境を作っていこう。
    (8) ろう者が全道どこからでも簡便かつ多様な手段で「緊急通報」を行うことができる仕組みづくりを求め、自らとその周辺のいのちを守ることができる社会づくりを進めていこう。

 

4.
国は、ろう者を含むすべての障害者の基本的人権を守るよう取り組むことを求める。

  • (1) 国は、障害者差別解消法の理念に沿って社会のあらゆる場面で障害者への合理的配慮の提供が推進されるよう制度を充実させ、障害当事者が主体となり、安心して暮らせる北海道に変えていくことを求める。
    (2) 国は、旧優生保護法のもとで行われた強制不妊や中絶手術をさせられた当事者やその家族への謝罪及び一時金支給を含む救済を行うよう求める。
    (3) 国は、未だ社会に根強く残る障害者への差別・優生思想の払拭に取り組むことを求める。

 

5.
ろう児とその保護者が手話言語による教育を受ける機会を確保し、すべてのろう児が自身のアイデンティティを確立できるよう求める。

  • (1) ろう児やその保護者が乳幼児段階から手話言語を獲得・習得できる環境をつくるため、医療・教育分野等ろう児に関わるすべての関係機関に対し、ろう児の求めるあらゆる療育・教育ニーズに応えられる適切な情報提供を行うことを求める。
    (2) ろう児が自己のアイデンティティを確立できるよう、手話言語による教育を確保し、その基幹となるろう学校の環境改善及びその存続を求める。
    (3) 人工内耳装用の有無にかかわらず、すべてのろう乳幼児とその保護者が適切な情報提供を受け、手話言語に触れ、その獲得・習得の機会を確保する支援施策を進めるよう求める。

 

6.
すべての芸術・映像作品に参画できる可能性を広げ、視覚的手段によって享受できるようにしていこう。

  • (1) ろう者が芸術・映像活動に聞こえる人たちと協働、参画し、文化芸術の発展につながる機会を広げよう。

 

7.
スポーツ活動を推進するために対応できる組織や運動を構築し、誰もが参画できる社会をつくろう。

  • (1) 誰もが健康で豊かにスポーツを楽しめることが出来る条件整備を求める
    (2) 生涯スポーツ及び競技スポーツ活動を広げることを求める
    (3) デフリンピックに出場する選手や競技団体の負担軽減のため啓発活動を展開していく。

 

8.
北海道ろうあ連盟の発展のために生活様式の変化や情報技術が急速に進化している社会に対応できる組織や運動を構築し、誰もが活躍できる社会をめざそう。

  • (1) 障害者関係団体と連携し、誰一人として取り残されることのない社会を実現していこう。
    (2) 会員の声を取り上げ、組織を活性化していこう。
    (3) 青年や聾学校とのつながりを深め、会員拡大につながるよう取り組んでいこう。
    (4) 「日本聴力障害新聞」「季刊みみ」の読者拡大、出版物の普及、全国手話研修センター後援会への加入を促進していこう。
    (5) 新たな事業展開により、連盟と加盟協会の財政基盤確立の強化を図っていこう。
    (6) 加盟協会の法人化も視野に事業を担える組織にしていこう。

 

2023年9月3日  第64回全道ろうあ者大会 岩見沢

 

大会宣言

本日、第59回全道ろうあ者大会は、14年ぶりに大湿原を有する町釧路市で開催できることを皆さまと喜びあいたいと思います。
また、一般社団法人釧路聴力障害者協会、釧路手話の会、北海道手話通訳問題研究会道東支部釧路班などが、 第59回全道ろうあ者大会実行委員会として大会の成功に向けて取り組んでこられた努力に心からの感謝を申し上げます。
釧路で暮らす聞こえない仲間たちの手で、釧路聴力障害者協会は1957年(昭和32年)に設立されてから 釧路で5回目となる全道ろうあ者大会が開かれます。
メインテーマの「つなげよう社会へ!命のことば“手話”」は、 私たちの取り組んできた歴史そのものであり、輝く未来につながっていく歴史だと確信します。
私たちは、「手話はいのち、手話は生きる力」を掲げ、全国及び全道の仲間とともに進めてきました手話言語法の制定運動は、 多くの人たちの魂を揺さぶり、地方や国を動かしています。
2年前に「手話を広める知事の会」や「全国手話言語市区長会」が設立され、 手話言語条例を制定した自治体は全国で185となりました。
特に本年4月から施行された北海道及び札幌市・小樽市が全国で初めて 「手話言語条例」・「情報・コミュニケーション条例」の2つを制定し、画期的な偉業を成し遂げました。
さらに、道内で手話言語条例を制定した自治体は19に増え、全道各地の市政の手話動画による広報をはじめ、 役所での手話講習会や観光地などの手話ガイドの設置、貴会での手話通訳の導入、 市民や児童を対象にした手話教室の開設など、手話言語の啓発や普及に大きな効果をもたらしています。
2016年4月に障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法の施行により障害者を取り巻く環境が変わりつつあります。
社会は言語によって権利を守られているように聞こえない人も 「手話言語法」「情報・コミュニケーション法」によって権利を守ることが必要なのです。
このふたつが国民に理解されるまで運動は続きます。
いまここに「北海道はひとつ」になって取り組んでいくことを宣言します。

2018年9月16日
第59回全道ろうあ者大会

大会決議

1.障害者権利条約にある理念に則り、手話による社会的障壁の除去をめざして

1)「手話言語法(仮称)」を制定し、社会のあらゆる分野で手話が日本語と同等に位置づけられ、使われるようにしていこう。
2)情報・コミュニケーション法(仮称)を制定し、情報アクセスと情報アクセシビリティの保障を社会に創っていこう。
3)「手話通訳士法(仮称)」を制定し、誰もが必要な時に手話通訳が保障される社会にしていこう。

2.「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の目的達成のために

1)道内市町村に手話条例をつくり、手話が通じ合える環境を創っていこう。
2)障害を理由とした差別、不平等、不合理なことをなくし、社会に参画していこう。

3.聴覚障害者情報提供施設を聴覚障害児・者の福祉、教育、労働環境充実の推進施設にしよう。

1)情報・コミュニケーションのアクセスに困難を抱える国民を支援する施設にしていこう。
2)災害時に対応できる情報発信設備を拡充していこう
3)手話通訳、要約筆記、盲ろう者触手話通訳、移動支援などの人材を育成、派遣出来る施設にしていこう。

4.ろう者の雇用と職場における情報及び支援環境の保障を求める。

1)ろう者が働きやすい職場環境づくりと、「聴覚障害」の特性を踏まえた合理的配慮の提供を求めるとともに、
ろう者の職業開拓・技能習慣の機会づくりを求める。
2)職業安定所へ手話協力員の常勤設置及び身分保障を求めるとともに、手話協力員委嘱要領の改善を求める。
3)障害者介助など助成金制度の手話通訳派遣の給付期間、給付額上限設定の撤廃などを求め、企業が利用しやすい制度への改善を求める。

5.聴覚障害児・者教育の充実と発展のために

1)聴覚障害児の学力的、集団的発達を保障し、ろう者として生きる力を育てるろう教育を求める。
2)学校現場における聴覚障害への理解を深めるとともに教職員への手話研修の義務付けを求める。
3)聴覚障害者教員の積極的な採用及びろう学校教員の専門性を尊重した人事異動を求める。
4)ろう学校の単独障害学校としての存続、ろう学校の名称存続を求める。
5)ろう学校での職業教育の内容・設備につき、人的・物的両面での充実を求める。
6)聴覚障害者の高等教育、生涯教育の場においても手話通訳等の情報保障を図り、教育を受ける権利が保障されるよう求める。

6.福祉制度の充実のために

1)日常生活用具の範囲拡充と給付制限の撤廃を求める。
2)障害基礎年金の所得による支給制限の撤廃を求める。
3)テレビ放送には、手話と字幕の義務付け、映画やDVDどの映像作品全てに字幕を求める。
4)全ての政見放送に手話通訳及び字幕付与の義務付けを求める。
5)ろう者が安心して使える「緊急放送・通信システム」の確立と、公的施設・避難所に『アイ・ドラゴン』設置を求める。
6)福祉サービスを利用する際の応益負担撤廃を求める。
7)日本語と同等の言語として、手話の獲得、習得使用、保存を求めていこう。

7.ろう重複障害者が働き、生活できる社会の実現のために

1)ろう重複障害児への教育を一層充実させるとともに卒業後の労働、生活、発達権の保障を求める。
2)ろう重複障害者の生活と職業実態を明らかにするよう求める。
3)ろう重複障害者の発達保障のため、生活・労働施設の拡充と必要な人件費の制度的保障を求める。
4)ろう重複障害者のための共同作業所やろう者が対象のディサービス活動に支援を求める。

8.手話通訳制度の法的確立のために

1)手話通訳士資格を国家資格にし、専門性を高めていこう。
2)手話通訳士を公的機関に正規職員として、一定数採用することを求めていこう。
3)手話通訳コーディネート業務を制度的に確立し、健康を守る体制の確立につなげていこう。
4)手話通訳者を『選挙運動に従事する者』に含めず、中立・公正を基本とし、公務員の通訳者も政見放送が担えるようにしていこう。

9.ろう者相談員の全道設置のために

1)相談員を設置し、人件費の保障を求めていこう。
2)国に対してろう者相談員制度の創設を求める。
3)ろう者相談員を正職員として採用することを求める。
4)ろあ者相談員の専門性確立と資質向上のため、国による継続的な研修制度を求める。

10.文化・スポーツ活動を推進するために

1)ろうあ者による美術・演劇・文芸などの文化活動を広げ、進めることができる条件整備を求める。
2)生涯スポーツ及び競技スポーツ活動を広げることを求める。
3)誰もが健康で豊かにスポーツを楽しめることができる条件整備を求める。
4)デフリンピックをパラリンピックと同等に位置づけること、理解を広めることを求める。

11.ろう高齢者のために

1)ろう高齢者には、利用する制度、手続きの全ての段階で、充分なコミュニケーション保障を求める。
2)ろう高齢者専門施設の増設と職員の人件費増額を求める。

2018年9月16日
第59回全道ろうあ者大会